2012/12/23 - 2012/12/23
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ダージリンと言えば、鉄道マニア必見のトイ・トレイン。世界遺産にも登録された、可愛らしい小型山岳鉄道です。でも、あまり期待しちゃだめですよ! 実際に行ってみると、予約が取れなかったり、蒸気機関車じゃなかったり、思ったより退屈だったりと、一筋縄ではいかないのがこの列車の特徴です。そんな、扱いの難しいトイ・トレインを私なりに分析してみました。詳細好きの人々に捧げる、「トイ・トレインのトリセツ」です。
**情報は、2013年1月のもの。1ルピー=1.6円で計算。
==シリーズ一覧==
ダージリン大百科① ダージリンから始まる旅
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10742974/
ダージリン大百科② タイガーヒルでご来光
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10739496/
ダージリン大百科③ トイ・トレインの取説 <==
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10744815/
ダージリン大百科④ 街歩きトレック編 (執筆予定)
==鉄道関連==
[インド]インド鉄道達人の予約術
http://4travel.jp/travelogue/10438828
[インド]ダージリン トイ・トレインの取説
http://4travel.jp/travelogue/10744815
[インド]カングラ鉄道 世界遺産への遠い道のり
http://4travel.jp/travelogue/10437820
[マレーシア] 電車でGO - モノレール・ループ編
http://4travel.jp/travelogue/10802253
[マレーシア] 電車でGO - 郊外住宅見学編
http://4travel.jp/travelogue/10806703
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[目次]
イントロ
時刻表と運賃
チケットの予約と購入
機関車
客車
駅を見学
車窓からの風景
グーム博物館
バタシア・ループ 観光客編
バタシア・ループ 撮り鉄編
(ディーゼル三枚連写、蒸気機関車 -往路、復路)
二等車で往復
まとめ -
[イントロ]
1999年に世界遺産登録されたダージリン・ヒマラヤ鉄道。西ベンガル州のNJP(ニュージャルパイグリ)とダージリンを結ぶ歴史ある山岳鉄道です。全長88キロ、高低差2000メートル。61センチの狭い線路を走る小型列車は、トイ・トレインの愛称で親しまれています。これを目当てにダージリンを訪れる人も少なくないでしょう。
残念ながら、2010年に起きた土砂崩れにより、NJP-クルセオン間は長期の運休を余儀なくされています。ニュース報道によると、2013年中に再開という話ですが本当でしょうか(現在、草ボーボー)。いずれにせよ、全面復旧まではクルセオンーダージリン間のみの乗車になります。 -
「乗れる世界遺産」トイ・トレインは、現在、二種類の形で運行されています。ひとつは、ダージリン-クルセオン間を走る通常のローカル線として。もうひとつは、ダージリン-グーム間を往復する観光用の「ジョイライド」として。
嬉しいことに、ジョイライドの便では、今も蒸気機関車が使われています。インドには、他にもカルカ・シムラ鉄道など3つのトイ・トレインがあります。しかし、現在も蒸気機関車が使われているのはダージリンとニルギリ山岳鉄道だけ。 それゆえ価値が高いと言えます。 -
[時刻表と運賃]
2013年1月現在、ダージリン発の列車ダイヤはこうなっています。最新のスケジュールは、ERAILなどでご確認下さい。
08:00 ジョイライド (暫定的にディーゼル)
10:15 ローカル列車 クルセオン行き (ディーゼル)
10:40 ジョイライド(蒸気機関車)
13:20 ジョイライド(蒸気機関車)
16:00 ローカル列車 クルセオン行き(ディーゼル)
16:00 ジョイライド(暫定的にディーゼル)
ジョイライドは、ローカル便と違い、次のような特徴があります。
- 往復のチケットで、グーム博物館の入場料込み
- バタシアループで10分停車。グーム駅で30分停車
- すべて合わせると、往復2時間強
- すべて一等席
- 基本的には蒸気機関車による運行
写真: erail.in でDarjeeling - Ghum を検索。 -
この時の運賃は、ジョイライドが往復で270rs(432円)。ローカル便の一等車が、グームまでで115rs(184円)、クルセオンまでで160rs(256円)。ローカル便の二等車が、グーム駅までで20rs(32円)、クルセオンまでで30rs(48円)。
ぱっと見、ジョイライドがボッタクリ料金のように見えますが、一等車のグーム往復料金(230rs)に、グーム博物館入場料(20rs)を合わせたものと、それほど変わりません。二等車の料金は、面白いことに、グーム駅までは乗合ジープと同じ(20rs=32円)。クルセオンまで乗ると、ジープ料金(70ルピー=112円)の半額以下。ただし、時間は車の倍以上かかります。
残念ながら、各便の車輌数はわかりません。私がリサーチした時は、一部の例外を除き、二両編成が基本でした。具体的には、ジョイライドの場合、一等+一等。ローカル便の場合、一等+2等という編成です。 -
[チケットの予約と購入]
チケットの購入方法は、恐らくこの4つ。
1. ダージリン駅で買う。
2. インドの他の駅で買う。
3. オンラインで買う。
4. 旅行会社経由で買う。
最もわかりやすいのが、#1のダージリン駅の窓口(写真)での購入。当日のチケットはもちろん、120日先のものまで予約出来ます。#2(他の駅で購入)も、ダージリン駅で買うのと全く変わらないはずですが、私は試したことありません。
erail.inで検索したところ、トイ・トレインにも、一応外国人枠が割り当てられています。具体的には、10:15発のローカル便で、一等車輌に2席。すべてのジョイライドに4席。もし一般枠が満席なら、これもデリーやコルカタなどの外国人専用窓口で試してみる価値はあります。 -
続いて、#3のオンライン購入。一般的には、インド鉄道のチケットは、IRCTC(アメックス・カードのみ)、又はCleartrip(Visa/MasterでもOK)を通してで購入します。試しにCleartripで購入してみたところ、ローカル便は問題なく買えました。しかし、ジョイライドは変なエラーが出てうまくいきません。往復チケットが処理できないのか、表示金額も間違っています。うーん、微妙ですねー。買える、買えないは別として、これらのツールを通して空席状況が参照できるのはいいことです(写真)。
最後に#4の旅行会社による代行。これは間違いなく可能でしょうが、入金やキャンセルなど、最も面倒くさい方法でもあります。
参考:
IRCTC - http://www.irctc.co.in/
ClearTrip - http://www.cleartrip.com/
インド鉄道達人の予約術:
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10438828/ -
冒頭で、「トイ・トレインは取り扱いが難しい」と書きましたが、それは予約に関しても言えます。10-11月のピークシーズンは、通常より早く予約が埋まってしまいます。ダージリン・ヒマラヤ鉄道は、単線で列車もノロノロ。簡単に増便することはできません。
逆にピークを過ぎると、乗客の少ないジョイライドは、便ごとキャンセルされてしまいます。それを避けるためには、より人気の高い10:40AMと1:20PMの列車に予約を入れておくのが無難でしょう。そして、稀ではありますが、土砂崩れやグルカランド関係のストライキで、列車が2-3日運行されないこともあります。その時は、運が悪かったと思って諦めるしかありません。
さて、予約できるものとして話を進めます(強引な!)。現在、列車は1日6便。そのうち、どの便に乗ったらいいのでしょう。値段にこだわるなら、二等席のあるローカル便。朝の方が天気がいいので、10:15AMの便がオススメです。どうしても蒸気機関車に乗りたいのであれば、ジョイライドの一択。ただし、便によりディーゼルだったりするので注意が必要です。2013年1月現在、蒸気機関車が使われているジョイライドは、4本中2本。これらの情報は時刻表からは判断できないため、駅窓口の張り紙を見て確認するのが唯一の方法です。 -
[機関車]
次に、トイトレインで使用されている車輌を紹介しましょう。まずは機関車から。ここまで説明した通り、トイ・トレインは、ディーゼル機関車、または蒸気機関車で牽引されています。写真のディーゼル機関車は、右側が正面っぽく見えますが、実は後側。運転席は左側を向いています。車輪の横にサンドボックスあり。 -
これが、ディーゼル車の運転席。電車はどれもそうですが、計器が山ほどある割には、運転に使うのはレパー2つだけだったりします。
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続いて、見所のひとつである蒸気機関車。ディーゼルと違いローテクなため、メンテにも運行にも人手がかかります。写真でいえば、線路に砂を撒く人が二人、石炭庫で石炭を砕く人が一人、さらに運転席に運転手と車掌の2人。
この写真はかなり昔のものですが、今回の滞在中、走行中の砂撒きは一度も見かけませんでした。ダージリン-グーム程度の勾配には不要ということでしょうか。 -
[客車]
続いて客車です。新しく導入されたものを除き、車輌にはたいてい名前がついています。具体的には、ザンスカールなどの地名や、チョモランマ、マカルー、ヌプツェ、パンディムなどの山の名前です。車輌のタイプは大きく分けて2つ。少しリクライニングの効いた一等車輌と、背もたれが直角な2等車輌です。トイレは、あったりなかったり。それぞれ見ていきます。
写真: 一等車輌ヌプツェ -
これが典型的な一等車輌。狭いながらも、三列のゆったりした造りになっています。ただ、座席の方向が固定だったり、リクライニングの調整ができない席があったりと、不便なところもあります。典型的なレイアウトで、5列15人。
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一等車輌の中には、内装が豪華なマハラジャ仕様のものもあります。豪華といっても、天井の装飾が凝ってたり、前方がガラス張りだったりするだけなんですけどね。しかも、私が見た時は、展望ガラス側に前の車輌が連結されていました。これらの一等車輌は、ローカル便に使われることもあれば、ジョイライドに使われることもあります。
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さらには、天井がサンルーフの車輌も導入されています。全部で4両。これには、採光だけでなく逆側の景色が見やすいという利点もあります(ガラス汚れてますけどね)。ただ、ひとつ問題があり、一等車扱いなのに横4列だということ。そうなると、窓際になる確率は、わずか50%。よく見ると、シートピッチも狭い詰め込み型の座席です。7列28人。
私が調査した時は、ジョイライドの便には、すべてこの車輌が使われていました。なお、このタイプの車輌には名前はついていません。奥にトイレあり。 -
続いて、二等車の車輌です。座席のレイアウトは、対面型だったり同じ方向を向いていたりと、車輌によりまちまちですが、背もたれが直角なのは共通です。一応、網棚付き。中には足元が広々としたものもあり、二等車だから乗り心地が悪いというわけではありません。
最近では、インド人観光客も料金の安い二等車に乗る事が多く、思ったより混んでいます。頼むから、俺たち貧乏旅行者の領域に来ないでくれ!
写真: ザンスカール号。33席。 -
はて、これは何でしょう。観光フェスティバルの企画で、客車の最後尾に台車を連結させ、関係者のお偉いさんや踊り子たちを乗せたものです。車輌ではなく台車..。考えましたねー。浅草サンバカーニバルの山車を思い出しました。
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[駅を見学]
何はともあれ、まずはダージリン駅まで行ってみましょう。駅があるのは、町の中心部から南に下ったところ。もし「乗る気」があるのなら、まずは窓口で今日の空席具合をチェックしてみまます。仮に満席だったとしても、決して無駄足ではありません。この駅自体、みどころ多いですからね。
ダージリン駅は開けた場所にあるため、町中よりカンチェンジュンガがよく見えます(写真)。駅はプラットフォームも線路も出入り自由。好き勝手に見学出来ます。車庫などないので客車は線路に並んでいるし、もし出発時間が近ければ、機関車がすでに入線しているはずです。構内に軽食カウンターあり。 -
オススメの見学時間帯は、ディーゼル(10:15AM)と蒸気機関車(10:45AM)が出発する10時台。さらに、蒸気機関車が戻ってきて、次の出発(1:20PM)までメンテが行われる12:50PM以降です。
写真は、一本目のジョイライドから帰ってきた後、メンテ用の線路で保守作業を行う蒸気機関車。ここでは、車輪周りのボルトを締め直したり、余分な蒸気を放出したり、と各種ルーチン作業が行われます。その後、場所を移動して、燃料の燃えカスを底から掃きだしたり、新たな石炭を釜に入れたり、エンジンオイルを注入したりと、見ていて飽きません。ただし、あまり近くで見ていると、突然燃えカスの灰が飛んできたり、蒸気の餌食になったりするのでご注意を。
写真: ピンクの点は、左から、サイドブレーキ(のようなもの)、釜の投入口、汽笛を鳴らす紐、ブレーキ、車掌が使う旗、蒸気の放出口。 -
写真は出発間近の蒸気機関車。このように、ダージリン発の列車は、スティームであれディーゼルであれ、機関車が逆向きに連結されます。運転士は変な感じでしょうが、後ろ側にもライトはあるし、アシスタントもいるので問題ないでしょう。ダージリンに戻ってくる時は、その逆、つまり前向きで連結されます。
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観光客に人気の蒸気機関車ですが、ひとつ厄介な問題を抱えています。それは、しょっちゅう調子が悪いことです。現在、一日二往復していますが、「技術的な問題」で2−3週間運行されないこともあります。その間、すべてのジョイライドはディーゼルで代行。私がいた時も、1週間以上ディーゼルで運行されていました。そして困ったことに、この手の情報は、駅に貼られた告知を見て初めて気づくのです。
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ただ、そんな運休時でも、駅隣りのワークショップ(写真上)では、常時メンテ作業が行われていて、やはり自由に見学できます。この壁のない作業場には、蒸気機関車が全部で4-5台。その内、少なくとも2-3台は使える状態に見えるのですが、何が問題なんでしょうね。おい作業員よ、日の丸描いてる場合か!
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これが、駅の南側にあるターンテーブル。実際に使用されてるところ、見たことありません。というのも、普段トイ・トレインは車輌の方向転換をしないからです。機関車が前から後ろに移動するだけ。
でも、全く使用されていないわけではないようで、時々すぐ横に置かれた客車が入れ替わっています。私の推測ですが、車輪の消耗を均等化するために、たまに車輌の方向をひっくり返しているのだと思います。
写真: 重量挙げ選手なら持ち上げられそうな、小さな車輪。 -
[車窓からの風景]
それでは、前置きはこれにくらいにして、実際に乗車してみます。まずは「お試し」で、グーム駅まで2等車輌(20ルピー=32円)で移動。トイ・トレインの場合、二等車でも座席指定になっています。そのため、必ずしも窓際に座れるとは限りません。そういう時、私はドアの横に立つことにしています。これが、一等車にはできない、二等車ならではの芸当です。
ところで、よくトイ・トレインに飛び乗ってくる人がいますが、あれは一体何なんでしょう。無料のバス代わり? どうも、「立ち乗りなら無料」という暗黙のルールがあるような気がしてなりません。 -
グーム駅までは約7キロ。普通に走って30-35分。蒸気機関車なら40分以上かかります。線路は、幹線道路であるヒルカート・ロードに沿って引かれており、大部分、道路の左端を走行します。
さて、この区間、右側と左側どっちの席がいいでしょう。眺めのよさで言えば、もちろん谷と道路に面した右側。開けたカーブからは、カンチェンジュンガやダージリンの町並みがよく見えます。でも、これらの眺めは、別にトイ・トレインに乗らなくても見えますよね。 -
そこで、私のオススメは、意外にも山に面した左側です。景色という意味ではゼロ点(ゴミだらけ)ですが、民家や商店スレスレに走る場所がより多いので、ちょっとしたスリルを味わえます。建物がない場所も、木の枝を避けたりと忙しいので、退屈しているヒマがありません。
でも、これがもし蒸気機関車ならどうなんでしょう。うーん、煤とか飛んでくるのかな。
写真: 右側の席も、グーム直前では「商店街スレスレ」を味わえます。 -
出発から15分後、大きく右にカーブし、巨大なダーリ・ゴンパを通過。
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さらに6分ほど走りバタシア・ループへ。ここで円を描くように登り、一気に高度を稼ぎます。ダージリンヒマラヤ鉄道も、他の山岳鉄道同様、ループやスイッチバックがいくつも設置されています。ただし、最も標高差のあるクルセオン-NJP間が不通のため、乗客が実際に体験できるのは、このバタシア・ループだけ。このダージリン・ヒマラヤ鉄道がちょっと物足りないのは、路線にダイナミックさが欠けているからかもしれません。
バタシアループは観光スポットでもあるため、ジョイライドの場合、ここで約10分間停車します(往路のみ)。 -
出発から30分後、グーム駅に到着です。ここは、全路線の最高点(2258m)にある駅で、ダージリンからここまでは、緩やかな登りの道でした。ローカル便はこのままクルセオンに向かうため、私はここで途中下車。もしこれがジョイライドならば、グーム駅で30分ほど停車した後、同じ車両でダージリンに戻ることになります。
写真は、駅に到着したジョイライドの蒸気機関車。この後、機関車だけ切り離されて、客車の反対側まで移動します。このように、客車自体は方向転換をしないため、行きも帰りも同じ眺め。これって微妙ですよねー。 -
[グーム博物館]
ジョイライドの乗客は、戻りの列車が出発するまで自由行動。といっても、30分ではろくに観光ができません。というわけで、ほとんどの人は、駅の二階にある博物館を見学してお茶を濁します。
博物館へは、線路隣にあるゲートから入場。ここには、初代とおもわれる1881年製造の蒸気機関車(写真)が展示されています。1999年に作り直されたもので、ほんとオモチャのような外観。 -
このグーム博物館には、主にトイ・トレイン関係の資料が展示されています。営業時間は10AM-1PM、2PM-4PM。ただ、実際にはジョイライドの到着に合わせて開館するため、この公示時間に閉まっていることもあれば、4時以降に開いていることもあります。入場料20ルピー(32円)はチケット代に含まれており、ジョイライドの乗客は支払い不要。というか、そもそもチケット・チェックがないので、それ以外の客も、やはり支払い不要です。で、肝心の博物館の中身ですが、特に面白いものはありませんでした。
博物館を軽く見学した後、ダージリンに戻ります。私は片道切符で来ているので、逆方向の便を待つか(夕方なら可能)、または乗合ジープ(20ルピー=32円)を捕まえて帰ることになります。 -
と、ここまでトイ・トレイン乗車の様子を紹介してきました。はっきり言いましょう。かなり微妙です! 乗車時間は短いし、景色が特段優れているわけでもありません。「たいしたことなかったよ」そんな観光客の声が聞こえてきそうです。どうした、世界遺産!
もちろん、乗車体験だけが世界遺産の理由ではありません。その裏にある文化や歴史、鉄道技術や周辺の景色、地元とのかかわり方、すべてコミコミでの評価なのです。そう考えると、先ほど素通りしたバタシア・ループこそが、最もダージリン・ヒマラヤ鉄道的な場所かもしれません。今挙げた要素がすべて詰まっているからです。 -
[ バタシア・ループ - 観光客編]
というわけで、翌朝バタシア・ループを再訪しました。バタシア・ループがあるのは、ダージリン-グーム間を4分の3ほど走ったあたり。ここにはダージリン出身のゴルカ兵の戦没慰霊碑があり、その回りを一周する形で高低差のある線路が敷かれています。
ダージリンからここまでは、乗合ジープが便利。ただし、シリグリ行きジープは短距離客を嫌うので、すでに走っているスキア・ポカリ行きあたりを狙いましょう。運賃は10-20ルピー(16-32円)の間。
この慰霊碑のある高台部分に入るには、入場料(5ルピー=8円)が必要です。ただ、それは南側の正門から入った場合。北側(写真右)からの坂や、南から線路沿いに入ればチェックはありません。私は迷わず、北側から入場。 -
これが、ループの中ある慰霊碑と兵士の像。この慰霊碑を中心として、花壇やベンチが整備され、ちょっとした公園のようになっています。
私がバタシア・ループに来たのは、まだ列車の走っていない午前8時半(この日は8:30頃通過するジョイライドがキャンセル)。朝早い時間だと、日中とは全く雰囲気が違います。まずは、一般観光客向けのバタシア・ループの姿から紹介していきましょう。 -
慰霊碑のある場所、つまりループを登り切った上にある高台は、たいへん見晴らしがよく絶好のヒマラヤ・ビューポイントになっています。カンチェンジュンガはもちろん、ダージリンの町もよく見えます。
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この時間帯なら、線路の上でビニールシートを広げた土産物売りの姿を見かけるはずです。彼女らの目当ては、タイガーヒルで御来光を見た後、グームやバタシアに立ち寄る観光客。彼らも、慰霊碑とここからの景色を見物に来ているため、お互いの頭の中にトイ・トレインは不在です。売り物は、民芸品や帽子、防寒具など。ダージリンの冬は、寒いですからね。
この毎朝行われる土産物市も、最初の列車が来る前には撤収してしまいます。その理由は、線路脇以外に適当な場所がないことと、観光客の数が一気に減るからです。彼女らが、ジョイライドの客向けに商売することは、基本的にありません。どうせ10分しか停車しないし、客の数も知れてますからね。この日で言えば、クルセオン発のローカル便が通過する9時半を前に、物売りの女性たちは姿を消しました。 -
土産物売りとは別に、線路近くに三脚を並べた「双眼鏡レンタル」(20ルピー=32円)のおじさんもいます。この人に限っては、日中も営業。
これよく見ると、2つ並んだ筒の中に、市販の望遠鏡をはめ込んだだけです。試しに利用してみると、おじさんが下のフレームを左右に動かしながら、「はい、これがカンチェンジュンガね、それで、これがカブルー..」などと、器用に双眼鏡の向きを変えながら解説してくれます。山の紹介が終わると、さらに町の方に向きを変え、「これがジャパニーズ・テンプル、こっちがダーリ・ゴンパ」などと続けます。もしかすると、このおじさんが、世界で一番長い時間カンチェンジュンガを見ている人かもしれません。 -
さらにもうひとつ、観光客向けのビジネスがあります。それは、コスプレ記念撮影。ここでは、レプチャ人の伝統衣装を着て、慰霊碑+ヒマラヤをバックに写真を撮ります。普段は大都市で生活しているインド人ツーリストも、竹カゴなんか背負ったりして、現地人に変身。このように、バタシアループは、朝早く来ると、山もよく見えるし、賑やかで楽しめます。
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[バタシア・ループ - 撮り鉄編]
==ディーゼル三枚連写==
ここまで、観光スポットとしてのバタシア・ループを紹介してきました。続いて、もう一つの顔「列車の撮影ポイント」としての姿を紹介したいと思います。開けて高低差のあるこの場所が撮影向きなのは、言うまでもないでしょう。土産物売りが去った後も、私はそのまま公園に残り、列車が来るのを待ち続けます。現在の時刻表だと、この場所をトイ・トレインが通過するのは、
ジョイライド ダージリン発 8:20分頃通過
ローカル便 ダージリン行き 9:30分頃通過
ローカル便 ダージリン発 10:35分頃通過
ジョイライド(蒸気) ダージリン発 11:10分頃通過
ジョイライド(蒸気) ダージリン行き 12:15分頃通過
朝だけで5本。ただ、私がいた時は、8時のジョイライドがよくキャンセルされていました。そうなると、一番最初の便は9時30頃にグーム方面からやってくるローカル便。その後、ダージリンからローカル便、ジョイライドと連続してやってきます。
写真: バタシア・ループから見た、ダーリ・ゴンパ(ピンクの点下)と日本山妙法寺の仏塔(上の点) -
辛抱強く待つこと30分。通過の時間が近づくと、遠くから汽笛の音が聞こえ始めます。でも、なかなか姿を現しません。徐々に汽笛の音が大きくなり、気づいたらすぐ近くに来ていたという感じです。
9:35AM、クルセオン発のローカル便が到着。あっという間にループを回り、公園から姿を消しました。ちょっとタイミングをとり損ない、撮れた写真はこの一枚だけ。 -
次の列車まで約1時間。この待ち時間の長さが、バタシア撮影旅行の難点でもあります。でも、公園のベンチで景色を眺めたり、物思いにふけったりすれば、あっという間。実際、私もさほど退屈した記憶はありません。
再び通過時間が近づくと、ダージリン駅の方から汽笛の鳴る音が聞こえてきました。それが少しずつ大きくなり、やっとバタシアループ手前のカーブからトイ・トレインが顔を出しました(写真)。 -
この後、列車は谷側を回って公園内へ。ループなので、上からも撮影できます(写真)。
-
さらにループを登って、公園のある丘の上へ。この時、写真のようにカンチェンジュンガをバックに列車を撮影できます。ただ、10時半過ぎというのは、雲が出始めていて少々遅い時間帯。できれば朝8時発のトイ・トレインで撮りたかった!
ここまでの3つの写真は、私が2分間、公園内を忙しく走り回ることで一度に撮ったもの。いやー便利な場所です。他にも、ループの橋を通過するところ、記念碑を回りこむところなど、いくつも撮影のパターンが考えられます。 -
==蒸気機関車 往路==
ローカル便が去ってから35分後、今度は蒸気機関車がやってきました。この時気づいたのですが、ディーゼルと蒸気機関車では、汽笛の音が全く違います。ディーゼルの方は、ポーッポーッと少し低音の入った音で、コンスタントに慣らして、道路にいる車や人に注意を呼びかけます。一方、蒸気の方は、ポッポーッと高い音。基本的に客を呼ぶ時に鳴らし、走行中はあまり鳴らしません。蒸気機関車は、普通に走っているだけでうるさいので、わざわざ汽笛を鳴らす必要がないのでしょう。
この写真は、バタシアループの橋の下を走っているところ。 -
斜め上から覗いて、石炭係が今も存在することを確認。彼は石炭を砕いて、釜の前にいる男性に手渡すという、何とも原始的で非効率な業務をこなしています。
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蒸気便はジョイライドなので、ここで約10分間の観光ストップがあります。もちろん、公園に居座っている私は、乗客に混じって記念撮影。こんな感じで、心ゆくまでバタシア・ループを楽しめます。
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==蒸気機関車 復路==
次の列車が来るのは、今のジョイライドがグームから引き返してくる1時間後。それまで、すぐ外のモモ食堂で昼めし休憩をとることにします。
50分後、再びバタシア・ループに戻り、グームから来る列車待ち。この方角は見通しがいいため、煙を見れば列車の現在位置がわかります。そうこうするうちに黒い車体が視界に現れ、公園に向かって一直線に進んできました。
復路はバタシア・ループに立ち寄らないため、そのまま素通り。ループを逆方向に走ります。復路のいい所は、蒸気にしろディーゼルにせよ、機関車が前向きについていることです。この写真も違和感ないでしょ。ここでも一通り撮影をこなしたところで、もうお腹いっぱい。そろそろ、ダージリンに戻ることにします。 -
移動はもちろん、道路をガンガン走っているシリグリからの乗合ジープ。行きと違い、帰りは簡単に拾えます。
でも、まだ終わりじゃありませんよ! トイ・トレインはのろいので、すぐにジープが追い抜いてしまいます。そこで、適当な場所、例えば列車が商店の軒先を通過する場所(写真)で途中下車。そこで待ち伏せして、街中を走るトイ・トレインを撮るのです。 -
撮影後、試しに列車を追いかけてみると...あっさり追いついちゃいました! トイ・トレインは走って追い抜けるほど遅いようです。そして、別の場所でも撮影。
こんな感じで、追っかけ撮影しながら駅に到着。それにしても、私は鉄道マニアでもないのに、何でこんなに一生懸命なんでしょう。 どうしても可能性を追求したくなる性格のようです。 -
[二等車で往復]
最後に、面白い乗車方法を見つけたので紹介しましょう。ジョイライドとローカル便の大きな違いは、ジョイライドがバタシアループに停まることと、チケットが往復なことです。前者はプラスなのですが、後者は同じ道を戻るだけなので、少々ムダです。逆にローカル便は、2等に乗れば安くすむ反面、バタシアループには停まりません。
なんとか、両者のいいとこ取りする方法なないものか..と考えていたところ、ありました。それは午後4時の便です。時刻表をよく見ると、なぜかクルセオン行きのローカル便とグーム往復のジョイライドが共に4時発になっています。何か変だぞー。 -
私は最初、スピードの速いローカル便の方が先に出発するものだと思っていました。実際、時刻表を見ると、グーム駅の到着時間が異なります。でも、実際の運行はそうなっていないようです。
現状では、なんとジョイライド用の2車輌が、ローカル便の2車輌に連結されるのです。そういうわけで、この列車はローカル便にもかかわらず、バタシアループに停まります。その間、ジョイライドの客にまじって私も記念撮影。
10分しかないので、乗客はここでも写真撮影に大忙し。やっぱり、運転席から半身乗り出してポーズ撮っちゃいますよねー(写真)。 -
毎日のように繰り広がられるこの馬鹿騒ぎ。それを黙って見つめるゴルカ兵は何を思うか..。
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観光ストップの後、列車は出発し、4:45PM、グーム駅に到着です。ジョイライドの客はここで降り、グーム博物館の見学に向かいます。しばらくして、ディーゼル機関車は、ローカル便の2両だけを牽引して、そのまま出発。さて、残されたジョイライド用の客車はどうやってダージリンに戻るのでしょう?
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このグーム駅では、朝10:15AMにダージリンを出発してクルセオンから戻ってくる列車が、夕方5時頃通過します。そのため、午後4時の便でグームへ行き、5時の便でダージリンへ戻る、というローカル便の往復が可能になっています。そして、ジョイライドの車輌もこの列車にくっついて、ダージリンに戻れるわけです。うまいこと考えましたね。
5:00PM、クルセオンからの列車が駅のホーム到着。しばらく停車してから、連結作業のため客車ごと前方に動き出しました。この時、ホームに降りていた乗客らは列車が出発したものと勘違いして大慌て。駅の売店で買ったチャイを半分こぼしながら、列車に飛び乗ります。でも、これはまだ連結作業の第一段階。線路が交わる場所まで進んだ後、今度はバックでジョイライド車輌にアプローチ。
そうすると...ドーン!。列車がぶつかり、車輌は大揺れ。同時に、残ったチャイをすすろうとしていた男たちの手からも、チャイが「ドーン」。結局、まともに飲むことなく全部床にこぼれてしまいました。このタイミングの良すぎるドタバタぶり。ドリフかよ! -
連結後、ダージリンに向かって出発。先ほどの彼らは、ダージリンに旅行に来たと思われる男性の集団。オシャレなダージリンには不似合いな労働者風の外観ですが、みんなデジカメを持っており、そこそこお金はありそうです。家族連れが大半のダージリンにあって、このような若い男性だけの集団もたまに見かけます。
私が乗っている「ゴルケイ号」は、2等車輌のわりには、足元がゆったりしていて広々。ドアが中心部にあるため、その反対側に荷物をまとめて置けます。あ、そういえば帰りのチケット買ってませんね。でも、2等車輌で検札があったためしがないので、気にしません。
** 壁には、消えかかった文字で「無銭乗車は..罰金100ルピー」と書かれています。 -
そうこうするうちに、5:50PM、ダージリン駅に到着です。冬なので、あたりはすでに真っ暗。こんな感じで、2等列車の片道料金(20ルピー=32円)だけで、ジョイライドとほぼ同等の乗車体験を得ることができました。でも、これがオススメかと言われると、かなり微妙です。午後の遅い時間のため、バタシアループからの眺めが全く期待できないのが一番の理由。でも、「乗車体験だけで十分」という方なら、これもありかも。午後のローカル便は観光客も少ないし、座席指定とはいえ、実質自由席みたいなものです。
** 現在(2013/07)、ERAILで時刻表を見ると、ジョイライドの出発時間が4:05PMにずれています。ですので、合体便はすでに無くなっている可能性があります。また、合体便自体も、客が少ないとジョイライド部分がキャンセルされます。 -
[まとめ]
ダージリン滞在中、駅に行くこと5回、バタシア・ループに行くこと3回、乗車すること2回。何だかんだで、結構な時間をトイ・トレインに費やしました。そのおかげで、「あ、トイ・トレインね、たいしたことなかったよ」とは、とても言える立場にありません。
今も目を閉じれば、快晴の朝、バタシア・ループでカンチェンジュンガを眺めながら列車を待つ自分の姿が目に浮かびます。遠く駅の方から聞こえてくる汽笛の音。その音が少しづつ大きくなり、カーブの先にトイ・トレインが見えた瞬間。すべてが昨日の事のようです。
何だかんだで、長い旅行記になってしまいました。家電製品とか特にそうですが、分厚い取り扱い説明書を隅から隅まで読む人など、ほとんどいません。たいてい、必要になった時に少しページをめくるくらい。だから、この旅行記も、飽きずに読んでくれる人がいるかどうか、ちょっとだけ心配です。でも、鉄道を愛する人達なら、きっと楽しく読んでくれるでしょう。私自体、トリセツ読むの大好きですから。以上、詳細好きの人々に贈る「トイ・トレインの取説」でした。 -
[リンク集]
==東北インド旅行記一覧==
ダージリン大百科 全4作
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10742974/
==インド旅行記一覧==
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==海外旅行記一覧==
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==国内旅行記一覧==
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/?dmos=dm&sort=when&view_mode=list
==鉄道関連==
[インド]インド鉄道達人の予約術
http://4travel.jp/travelogue/10438828
[インド]ダージリン トイ・トレインの取説
http://4travel.jp/travelogue/10744815
[インド]カングラ鉄道 世界遺産への遠い道のり
http://4travel.jp/travelogue/10437820
[マレーシア] 電車でGO - モノレール・ループ編
http://4travel.jp/travelogue/10802253
[マレーシア] 電車でGO - 郊外住宅見学編
http://4travel.jp/travelogue/10806703
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