第39回海外放浪/香港&中国･その6.香港から陸海路で横浜へ帰る④ 上海フェリー蘇州號乗船記(上海～大阪)

9:03
宿を8:40にチェックアウトして上海国際フェリーターミナルに向かいます。
最近になって国際フェリーターミナルの近くに地下鉄12号線の「国際客運中心」駅が開業しました。
昔はタクシーか市内バスで行くしかなかったらしいので便利になりました。

9:10
この建物が、上海国際フェリーターミナル…　と、ここに着くまで思いこんでいました。
国際埠頭にふさわしい未来的な建物ではありませんか。
しかし、ここではありませんでした。

昨日、チケットを受け取りに上海フェリー代理店に行った時、この建物がフェリーターミナルだと思いこんでしまいまして…

中に入るとガラ～ンとしていて何もありません。
このすぐ奥にフェリーが停泊しているのは見えるのですが…
案内板も何もありません。

この周辺をあっち行ったりこっち行ったりと探し回りました。
9:30までに乗船手続きをしないといけません。
余裕が焦りに変わっていきます。

あるのはオフィスばかりです。
警備員に「オオサカフェリードコ？」と身振り手振り聞きまくりました。
中国の警備員はやる気がありません。
チッとした顔で「あっちだ」と言うそぶりをするのでそちらに行ってみると…

9:26
見つけました。
私が思いこんでいた建物とはまったく別の場所でした。
急げ！
あと4分しかありません。

上海国際フェリーターミナルはこんな所でした。

あの華やかな建物を国際ターミナルと思いこんだ私が馬鹿でした。
急いで中へ入ります。

9:29
ハァハァハァ～
もう汗びっしょり！
なんとか9:30までに間に合いました。

それにしても館内はガラーンとしていて受付がポツンとあるだけ…
この後、ゆるゆるの手荷物検査と、出国審査を受けて乗船を待ちます。
そう言えば建物内には売店もなかったような気がします。
船に持ち込む物はあらかじめ買ってから来るのが正解です。

ターミナルから船まではわずかの距離ですがバスで移動します。

上海フェリー「蘇州號:SU ZHOU HAO」です。

上海?大阪.960マイル(1546キロ)を約45時間かけて航行します。

1993年に建造された、22年のベテラン船です。
14410tの大型客船とうたっていますが、これは国際条約に基ずいたトン数で、日本の規格だと7500tほどになります。
過去に乗船した、太平洋フェリー(きそ.15762t)や阪九フェリー(いずみ.15897t)と比べると小さいフェリーです。

中華人民共和国‥一級文明客船に指定されています。

※前日に対岸から撮影しました。

9:55
さぁ、憧れの国際航路にいよいよ乗船です。
岩壁からタラップを登って乗るなんて、情緒ありますね。

10:06
今回は奮発して1等船室です。
欧米人のバックパッカーさんと相部屋です。

1等船室は2段ベッドの4人部屋となっていて…

奥にはこじんまりとした絨毯スペースがあります。

1等の各客室には洗面台が配置されています。
トイレ・シャワーは客室にはありません。

客室の備品です。

左上‥昭和の時代を彷彿させる魔法瓶。
右上‥中国製液晶テレビは日本近海で日本の番組が見れました。
左下‥客室内は禁煙です。
右下‥船室内の空調と音量調整ツマミ。

船内資料に中国美人による救命胴衣の着用説明が記載されています。
中国でも長江で客船転覆事故があったばかりなのでこれは重要です。
よく読んでおきましょう。

それでは恒例の船内視察を始めます。

まずはCデッキ中央のエントランスホールです。
螺旋の階段が古いゴージャス感をかもしだしていますね。

Cデッキには、服務台・ホール・医務室・2等船室があります。

服務台‥船内案内所です。
船内の案内や食堂営業などのアナウンスを行います。

Cデッキロビーです。

船内で一番揺れが少ない場所です。

自販機コーナーです。

全て日本の自販機で日本円のみ使用可能です。

麒麟orアサヒビール350ml‥160円
ワンカップ日本酒‥200円
日本製タバコ‥310円
→酒.タバコは免税価格なので安いですね。

ジュース類500ml‥200円
森永牛乳‥130円
カップヌードル‥240円
→こちらは船内価格なので高めの設定で酒類よりジュースの方が高いです。

こりゃ、ビール飲まないと損した気分になりますね。
愛煙家の方もここならタバコが安く買えます。

貴重品を預けるのに便利なコインロッカーです。
100円玉専用で、使用が終わるとコインは戻ってきます。

給湯器です。
あたたかいお茶と冷水もあります。
船旅には必需アイテムですね。

船舶公衆電話はNTTのもので、日本近海でのみ通話可能です。

診療所があるのですが、先生と看護師さんの姿は航海中見られませんでした。

船酔いで診察してもらっても、おそらくG○RO袋を渡されておしまいなんだろうなぁ。

売店です。
免税品もありますが品数はイマイチ。
お菓子やアイスなどもあります。
上海フェリー限定グッズは全くありませんでした。

Cデッキの甲板は昔懐かしい木製の甲板です。

Cデッキ甲板に洗濯機がありました。
船員さん専用なのか、船客も使用可能かはわからず。

Cデッキ。
2等船室です。
大部屋雑魚寝タイプとなっていて、こちらとは別に女性専用2等船室もあるようです。

階段を上がるとBデッキです。
1等船室・サロン・食堂・売店はこちらのデッキにあります。

Bデッキのサロンルームです。
大海原を見ながらソファーでゆったりとくつろぐことができます。

食堂です。
東シナ海の大海原を眺めながら食事を楽しめます。
メニューは日替り中華定食をはじめとして、中華料理、エビフライやハンバークなども、庶民的な価格でありました。

食堂の各食事の時間は決まっているので、この時間を外すと断食になるか、自販機のカップ麺でしのがなくてはなりません。

トイレです。
一昔前の公衆トイレの感じがしますね。
言うまでもなく、ウォシュレットはありません。

トイレの奥にシャワー室があります。

Bデッキ最前部にフォワードデッキがありました。

前方が見え、操舵室にいる気分が味わえます。

中国人民が多いこの船にこんな本が…
数少ない日本人船客の抵抗なのか？

船客が入れる最上部はAデッキです。

VIP船室・特等船室・喫煙所・大浴場があります。
写真は喫煙所です。

展望浴室です。
1等以上の船客が利用できます。
出航前なのでお湯は綺麗だけど、壁がボロボロでカビだらけです。
高圧洗浄機で掃除してあげたくなりました。

これで船内視察を終了します。
お風呂に入ってさっぱりしましょう。

10:45
お風呂に入ってサッパリです。
ビール片手に甲板に出てみました。

浦東地区のビル群が目の前です。
お別れの記念にパシャリ！

さらば上海。
ささやかに乾杯！

10:58
定刻よりわずかに早く離岸しました。
銅鑼も鳴らず、紙テープもない静かな出航です。

タグボートが船体を押して出航のヘルプをしてくれていました。

船体を180度、転回させ‥
船首の向きが変わったら、出航です。

上海→大阪.航海距離1546キロ、2泊3日の航海が始まりました。

11:20
黄浦江にかかる全長7658mを誇る世界第4位のダブルロープ式斜張橋‥楊浦大橋をくぐります。

フォワードデッキからの眺め。
まだ海ではありません。
黄浦江から長江に入った頃でしょうか？
それにしても中国の川って大きいですね。

12:45
昼食です。

日替り中華定食がなんと500円！
船内食堂の部類では安いですね。
食堂では日本円が使えます。

麻婆豆腐
豚肉中華風煮物
チンゲン菜炒め
米飯
タマゴスープ
スイカ

グラスがキンキンに冷えていて、青島ビールが超旨い！

日替り中華定食‥500円。
青島ビール‥250円。

長江を眺めながらの食事です。
船が揺れだす前にしっかり食べておきましょう。

14:43
長江は中国の大動脈。
たくさんの船が行き交っています。

15:50
ざば?ん！
長江を抜けて外洋にでると、波がたってきて船が揺れ始めました。
これから波高4メートルの時化の中を航行します。

ここで、船旅の友‥G○RO袋が登場しました。
船内のいたる所に、配備完了。
さぁ、これから揺れますよ～

服務台には酔い止めの薬が置かれました。

かなり揺れています。

備えあれば憂いなし。
私も念の為に薬をグィっと飲んでおくことにします。
今までの経験から液体の薬は良くきくので酔った事がありません。

18:44
薬の効き目なのか‥
居眠りをしてしまいました。
あいかわらず時化ていて船は揺れています。

風呂は女性用が壊れていて男女入れ替えで入れるようになっています。
この時間は女性用なのでシャワーを浴びにいきました。

19:00
シャワーを浴びてさっぱりしました。
お腹すきましたね。

食堂に行くと…
みんな船酔いで苦しんでいるのでしょうか？
船が揺れているせいでガラガラです。

さすがに定食は重いので軽く炒麺(焼きそば)にしました。

厨房からジャー.ガシャンガシャンと中華鍋をふるう音が聞こえてきます。
揺れているのにたいしたものです。

オイスターソースで味付けされた炒麺は香ばしく、この揺れの中でも食欲をそそります。

頂きまーす。

炒麺(焼きそば)‥500円。

やる事もないし、たまには早く寝ましょう。

明日も丸一日、船上の生活です。
おやすみなさい。

※揺れていて体が上下左右に動いているのが画像ではわからないのが惜しい所です。

5:00
早く寝たせいか早起きしました。
いやぁ、よく眠れました。
しかし、揺れはまだおさまっていません。
船内のいたるところに配備されたG○RO袋がゆらゆらと揺れています。
外はどうなっているのでしょうか？
甲板に出てみましょう。

ザバババーン！！
あいかわらず時化ています。
何も見えません。
今、東シナ海のどの辺りなのかもわかりません。
こんな海上でもちゃんと大阪へ向かっている事を信じるしかありません。
船長様に命を託して無事に着くことを祈るばかりです。

やる事もないし、もうひと眠りするか‥

6:57
再び、おはようございます。
何時間寝たのでしょうか？
12時間以上は寝ていますね。
地上での生活ではこんなに寝られるなんてありえません。

ところで私の時計は6:57なんですが、船内の時計は8時前です。
時差を忘れていました。
私の時計は上海時間。
船内の時計は日本時間です。
時差を忘れるほど船の旅はゆったりとしています。

8:03(日本時間)
あいかわらず時化ています。

8時から展望浴場が男湯としてオープンするのでタオル片手に行ってみたら‥
ドアにカギがかかっているではありませんか。
船員さんに聞いたら時化で揺れているから閉鎖しているとの事。

残念！
シャワーで我慢します。

8:25
航海中の朝食は運賃込みとなっています。

チョコロールパン
あんパン
ゆでタマゴ
トマトと胡瓜
パイナップル一切れ
お粥
ジャスミン茶

なんて質素な朝食なんでしょう。
パイナップル一切れと言うのが泣けてきました。

今日の天気図です。

みごとに梅雨前線が上海から関東にかけてつながっていますね。
この船は梅雨前線の真下を航行しています。
南の海上には台風が三つもありますね。

乗船前に入手した情報では今日の11時頃から波が穏やかになって来るとの事ですが、どうなるのかな？

船酔いしていないので余裕です。

11:00
大阪から上海に向かうもうひとつの国際フェリー‥日中国際フェリー新鑑真号と反航するのではないか‥　とフォワードデッキからずっと前方を眺めているのですが、なかなか姿を現しません。
同じ会社の船なら服務所の船員に聞けばわかるのですが、別会社なのでわからずじまいで結局、反航シーンは見られませんでした。

さて11時頃になると海上が穏やかになって来ました。
どうやら時化の峠は越えたようです。

11:45
前方に島を発見！
我が国固有の領土‥長崎県五島列島です。
日本の領海に入って来ました。
バンザーイ！

12:50
何もしなくても腹は減ります。
昼食です。

日替り中華定食にしました。

魚の中華風煮つけ。
ピーマンの炒め物。
茹でチンゲン菜。
米飯。
トマトと卵の中華スープ
スイカ。

どこで獲れた魚だかわかりませんが、ピリ辛風味の煮つけはなかなかいけます。
これで500円はおトクですね。

日替り中華定食‥500円。

蘇州號は21ノット(約38km)で航行しています。

携帯は圏外です。
だから会社からの電話もない。
イヒヒ…
これだから船旅はやめられない。
幸せな時間です。

16:40
我が国.日本領海に浮かぶ島。
何と言う島なんでしょうか？
日本のフェリーならモニターに現在地が表示されるのですが、蘇州號にはそんな立派な設備はないのでわからずじまい。

自国の領海だとなんかホッとしますね。

ではここで一曲♪。

〔憧れの上海航路〕
作詞‥オーヤシクタン。
作曲‥あなた。

日本と異国を船でゆく♪
時間はかかるが心の贅沢かなえます♪
大海原に包まれて僕らはいくよ♪
遅くても心に残る船の旅♪
憧れの上海航路♪

東シナの波に揉まれながら航海する蘇州號♪
ゆらゆらと揺られながら異国を目指す♪
揺れても心に残る船の旅♪
憧れの上海航路♪
憧れの上海航路♪

すいません。
お粗末様でした。

17:55
船旅最後の晩餐も日替り中華定食です。

豚肉の甘煮。
千切り豆腐。
茹でチンゲン菜。
米飯。
中華スープ。
スイカ。

青島ビール。

麺みたいな料理‥「何だろ？」と思っていたら、中国で仕事をしていた日本人男性客が、これは百頁(パイウ)と言う1ミリほどの厚さでシート状に成形した豆腐を細く切断した豆腐麺だと教えて頂きました。
高野豆腐みたいな食感でした。
ちなみに豆腐の発祥地は中国だそうです。

日替り中華定食‥500円。
青島ビール‥250円。

北九州市小倉沖.辺りを航行中です。

おおっー！
我が国‥日本！
帰って来たぜぇ。

関門海峡に入りました。
下関沖を航行しています。
釜関フェリー(下関?釜山)の星希(国際規格.16875t)が停泊しています。
韓国にも船で行ってみたくなりました。

18:38
関門大橋を通過します。
みんな甲板に出て記念撮影をしていました。

関門海峡大橋をくぐり終え、関門海峡?周防灘?瀬戸内海へ向かって行きます。
大阪まで、あと12時間です。
船旅はまだまだ続きます。

周防灘に入りました。
後方に夕暮れの景色を眺めます。

関門海峡を抜けてから、後ろを追いかけて来るフェリーがありました。

よ～く、目をこらえて見ると、阪九フェリー.つくし(13353t)ではありませんか。
新門司から神戸に向かう便です。
この後、我々の蘇州號を抜いていきました。

20:00
雲がかかってしまっていたので、夕日は見えませんでしたが、陽が落ちた後の幻想的な風景を眺めることができました。
一番星です。
この後、わずかな時間でしたが、船上の空に一面の星空を見ることができました。

5:40
朝、甲板に出てみました。
瀬戸内海を航行中ですが、何も見えません。
客室に戻って、もう一眠りします。

7:00
二度寝をしたら、その間に明石海峡大橋を通過してしまいました。
まぁ、何度も見ているからいいか…

7:45
朝食です。
船上の食事もこれが最後です。
よく味わって食べましょう。

マントウ
肉まん
餡まん
ザー菜
ゆでタマゴ
ハム２切れ
パイナップル１切れ
お粥
中国茶

食事をしていたら、後方からどこかのフェリーがやって来ました。
どこのフェリーだろ？

アップしてみると…

名門大洋フェリー(新門司-大阪)の、フェリーきょうと2(9730t)です。
あっと言う間に抜いていきました。
日本のフェリーは速いですね。

8:13
上海から44時間30分‥
蘇州號は目的地の大阪港に入港します。

あっ！
又しても後ろからどこかのフェリーが近づいて来ました。
どこのフェリーだろ？

フェリーさんふらわぁの大阪と鹿児島県の志布志を結ぶ、さんふらわぁきりしま(12415t)ですね。
昨年の日本縦断.北海道から沖縄へ‥で同型船に乗って時化で大揺れした記憶が甦りました。

大阪港国際フェリーターミナルが見えて来ました。
面白い形の建物ですね。

8:26
岩壁にロープがかけられました。
いよいよ接岸です。

8:40
船内放送で「船客はCデッキロビーに集合して下さい」と案内があったので行ってみると‥
検疫が始まっていました。

9:10
下船が始まりました。
上海から約45時間‥
長いようで、あっと言う間に終わってしまった感じがします。
名残惜しいですが下船します。

入国審査は外国人と日本人のブースが別れておらず同じブースで行なうので、のんびり行くと待たされます。

税関のチェックは空港より厳しく、バッグの中を全て調べられました。

これで無事に帰国です。
楽しい船旅を終えて、横浜に向かいます。

私が下船した翌日に大阪を12:00に出港した便は、台風の影響で東シナ海は高さ7mの大時化となり、途中で待避したとみえ、7月12日12:00上海入港予定が大幅に遅れて7月14日6:28に上海入港となりました。

私が乗った便は、海が少し荒れたものの、大阪に定刻に着いてラッキーでした。
二日も遅れたら会社クビになっちゃうかもしれません。

つづく。