悪天候に振り回された離島航路旅・その5.〔祝〕新造船就航 十島村営「フェリーとしま2」乗船記(鹿児島～宝島)往路3

鹿児島.23:00発のフェリーに乗ってトカラ列島をクルーズ中。
本編は、平島出航後で悪石島/小宝島/宝島までの乗船記です。

この旅行記の運航ダイヤ。
↓
平島.8:20
↓
悪石島.9:15/9:25
↓
小宝島.10:45/10:55
↓
宝島.11:30

※十島航路の画像。
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乗っているのは、このフェリーです。

十島村営「フェリーとしま2」1953t (鹿児島～トカラ列島～名瀬)。

三菱重工業下関造船所で建造され、今年(平成30年)4月2日に就航したばかりの新造船です。
この船でトカラ列島の宝島まで行って、そのまま鹿児島へ戻るだけと言う一般の方には理解不能なクルーズを楽しんでおります。

※宝島到着時に撮影した画像です。

8:50
鹿児島から9時間50分。
定刻より25分遅れで、平島を出航しました。

平島～悪石島は、21km/55分の航海です。
悪石島がうっすらと見えていますね。

船内モニターで操舵室からの眺めがご覧いただけます。
荒れた海を突き進んでいますよ。

ドドーン！
バッシャーン！

ザババーン！
台風7号が、北上しており、海況は悪いです。
1953tの船だと、揺れますね。

東シナ海を南にむけて航行中。

悪石島が近づいてきました。
周囲12.6kmのこの島は、仮面神ボゼに象徴される神々の島です。

そして‥

悪石島を前に忘れてはならないのは、学童疎開船「対馬丸」です。

昭和19年8月22日午後10時12分、鹿児島港から南へ143浬はなれた北緯29度33分、東経129度30分、十島村悪石島の西北方、6.7浬の海上を航行しつつあった船団のうちの一隻が、敵の潜水艦ボーフィン号の魚雷攻撃にあい、11分ののち沈没した。
船の名は対馬丸、6754トン--

船団は三隻、それに砲艦「宇治」と駆逐艦「蓮」の二隻の護衛がついて、沖縄からの疎開者を鹿児島へ送るとこであった。
僚船、暁空丸と和浦丸の二隻は、対馬丸が火柱を吹き上げて暗黒の波間に消えるのを見とどける暇もなく散開した。
対馬丸は、学童、一般あわせて1661人、うち学童834人を満載していた。ーー

「対馬丸」大城立裕.著の一文より。

学童疎開船「対馬丸」6754t。
日本郵船のT型貨物船の一隻で、1914年(大正3年)に建造。
建造後30年経過した古い貨物船に、那覇市内の国民学校8校の生徒をはじめ、県内外から集まった一般疎開者1661名が乗船したと言われています。

政府命令による学童疎開輸送船として、昭和19年8月21日18時35分、対馬丸と暁空丸、和浦丸で構成されたナモ103船団は台風接近による激しい風雨の中、蓮と宇治の護衛により長崎(鹿児島？)へ向けて那覇を出港しました。

一方、アメリカ海軍は暗号解読などにより、ナモ103船団の予定航路をおおよそ把握しており、8月22日22時9分、トカラ列島悪石島北西10km沖において、潜水艦ボーフィンが距離約2.56kmで魚雷6本を発射し、2本が対馬丸に命中。
続く3本の魚雷が対馬丸の第一、第二、第七船倉左舷に命中。
間を置いて、別の魚雷1本が対馬丸の第五船倉右舷に命中。
ボーフィンの魚雷命中から11分後の22時23分頃、対馬丸は大爆発を起こして沈没‥

船の爆風で救命ボートが転覆し、対馬丸の生存者は台風襲来の中、筏で漂流しながら救出を待つことになりました。。
漂流は、風雨、三角波、眠気、真水への渇望、錯覚等との戦いでありました。

※ウキから文章を一部抜粋して引用させて頂きました。

9:30
沈没地点は、トカラ列島悪石島北西約10km地点‥
北緯29度31.93分・東経129度32.9分。
私が所持するGPSカメラでの計測ですと、現在地は北緯29度47.20分・ 東経129度57分です。
対馬丸撃沈地点はこの辺りになります。

平成9年12月12日、科学技術庁.海洋技術センターの海底調査により海底に横たわる対馬丸が発見され、遺族は遺骨収集と船体引き上げを政府に要請しましたが、引き上げ不可能と受け、今も船体がこの海域の水深871mに横たわっています。
尚、船体引き上げに変わる遺族慰謝事業として全額国庫補助によって、撃沈から60年後の平成16年8月22日に対馬丸記念館が開館しました。

対馬丸撃沈による犠牲者。
疎開者(学童)784名。
疎開者(訓導・世話人)30名。
疎開者(一般疎開)623名。
船員24名。
船舶砲兵隊21名。
合計1,482名。
※対馬丸記念館のデータです。

犠牲になられた方々のご冥福と世界平和を祈り、黙祷する筆者。

悪石島西岸に入ると、波がなくなりました。
動揺もしなくなり快適です。

トクノヲ岬沖を通過。

ズームすると‥
悪石島も断崖絶壁の島ですね。

9:37
ボォー
入港の汽笛が鳴りました。

平島から47分。
悪石島.やすらぎ浜港に入港します。

それでは、接岸の儀(単に眺めるだけ)に参列しましょう。
本日5回目の儀式です。

狭い湾内で船を回頭させ、接岸体制に入りました。

ホーサーがビットにかけられました。

※ホーサー(係留用ロープ)。
※ビット(係留用鉄杭)。

9:44
30分遅れですが、無事に接岸完了。
パチパチパチ‥

あのイラストに描かれているのが、島の象徴である神々‥仮面神ボゼです。

搭載車両が下船していきました。
工事関係者かな？

フォークリフトがコンテナを運んでいます。
桟橋が狭いから大変そう。

みんな、このTシャツを着用‥
悪い人じゃないよ。

停泊時間10分。
すぐに出航の儀(単に眺めるだけ)に参列します。

グワーン
ランプウェイが閉じられ‥

10:00
ゴゴコゴォー
定刻より35分遅れで出航です。

ボォー
出航の汽笛が港に響きます。

大きく弧を描いて‥

沖合へ。
進路を南へ変えていきます。

悪石島～小宝島は、35km/1時間20分の航海です。

悪石島よ。
さらばじゃ。

数時間後に又寄るよ。

ここまで来ると、大半の船客は下船して、船内は静かです。

2Fロビーで寛ぐ筆者。

10:25
何もしなくても腹がへります。
昨夜、鹿児島で買っておいたパンを食べちゃいましょう。

ソーセージパン‥75円
クリームパン‥70円
BOSSカフェオレ‥60円

ザババーン！
悪石島を過ぎると、再び波が高くなりました。

左の島は、小島(無人島)。
右の赤枠が次の寄港地、小宝島です。

小宝島は、周囲4km。
トカラ列島有人7島の中で一番小さい島です。

波は高いけど、天気が良くなってきた。
この調子で頼みますよ。

小宝島。
横から見ると、妊婦が横たわっているみたい‥

海の色はコバルトブルー。
左に舵をとり‥

11:13
ボォー
入港の汽笛が響きます。

悪石島から1時間15分。
小宝島.小宝島港に入港します。

あの桟橋に接岸するようです。
それでは、接岸の儀(単に眺めるだけ)に参列しましょう。

スクリューで海面が白くなっている。
まるでサイダーみたい‥

そして‥
海面全体の色が綺麗だ。

平島と、ここ小宝島港はうねりが入ってくると操船が難しくなるそうです。
狭い湾内で‥

回頭しています。
巧みな操船技術です。

接岸体制に入りました。

巧みな操船で指示を出している船長。
横にいた旦那さんが「この船長の腕はピカイチだよ」と言っていた。

船体をゆっくりと岸壁に寄せていきます。

ピタっと接岸。
すばらしい！

11:21
タラップがかけられて接岸完了。
パチパチパチ‥

小宝島はサンゴが隆起してできた島だそうです。
港の先にはサンゴ隆起海岸が広がっていました。

光が反射して、エメラルドグリーンの海‥
船に乗っているだけだけど、来て良かった。

物資がフォークリフトで運ばれていきます。
次便は台風で欠航確定だから、島民にとって貴重な物資だ。

荷役作業が終わると‥

11:32
出航です。
ゴコゴゴォー

船体が岸壁から離れていきます。
停泊時間は10分でした。

港外へ。
湾内と外海で海面の色が違うのが見える。

定刻より37分遅れで出航しました。

次は、終点の宝島です。
小宝島～宝島は、13km/35分の航海です。

小宝島よ。
さらばじゃ。

帰りも寄港すると思ったら、抜港となりました。

うっすらと、宝島が見えて来ましたよ。

宝島は周囲13.7kmの島で、トカラ列島有人島としては最南端の島です。
鹿児島寄りの口之島からは、同じ十島村内でも航路距離139km/6時間20分かかります。

12:05
鹿児島から339km/12時間5分。
最終寄港地である宝島.前籠漁港に入港します。

それでは、7回目となる接岸の儀(単に眺めるだけに)参列しましょう。

接岸地点にあるのは‥
法面に高さ10m・横幅50mにも及ぶ色鮮やかな巨大アート。
海底都市をイメージして描かれた巨大壁画です。

湾内で回頭して‥
最終の接岸体制に入りました。

ホーサーがビットにかけられます。

12:11
接岸完了です。
定刻より41分遅れで着きました。
パチパチパチ‥

本来ならこの後、奄美大島.名瀬まで運航されるのですが、台風が向かって来ているので、宝島～名瀬は欠航となり、ここが終点となります。

てな訳で、下船しましょう。

〔祝〕
トカラ列島.宝島に上陸。

12:14
鹿児島から13時間フェリーに揺られて、上陸した筆者。
さて、次の鹿児島行は荷役作業終了後です。
台風が来るので、これに乗らないと、いつ鹿児島へ戻れるかわからなくなります。
てな訳で、島内観光をすることが私には許されません。

十島村営「フェリーとしま2」よ。
帰りもよろしく頼みますよ。

えぇ～まだ続くのかよ‥と思われて恐縮ですが、次回から復路編です。
拙い旅行記にお付き合い下さいまして、誠にありがとうございました。

つづく。