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胡同で「パリと北京と東京と」を感じる

旅行時期:2005/11

評価なし

次回の北京で是非行きたいところが五福楼・老馬拉面店です。
文藝春秋、去年の12月号に載ってました記事に出てくる北京の店です。
私の好きな連載でグルメの勝見洋一さんが書いてます「美食の記憶」というのがあります。
写真つきの連載記事です。
この号の題は「パリと北京と東京と」です。
北京の胡同の小道のテーブルで勝見さんと仲間達が串焼きやら羊の前脚をかっ食らってる
風景の写真と記事が載っています。
そのページを切り取りデジカメで写したものが貼り付けた写真です。
9月中旬にまた、北京へ行きますが、この店を探して、私もかっ食らって来ようと思います。
さて、なぜに・・・
北京でもパリでも生活したことがあり、グルメで、美術品にも審美眼があり、
しかも江戸っ子である勝見さんが、北京の胡同のこの店に「パリと北京と東京と」を感じたのか・・・

記事を書き写したものを転記します。
この中で・・勝見さんは赤ワインということらしいですが、私は勿論、あの酒です・・・そうです・・「になべあたま」です。
56度の強い酒、北京の老百姓の酒です。
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 店の前の路地に小さな丸椅子とテーブルを持ち出して座り込んだ。
安ガラスのコップに赤ワインを注ぐと、空の青さが映りこんで小さな空がチロチロ揺れる。
すると狭い横丁を少年二人が走ってきて、
  「イ尓快点、?(もっと、急ごう)!」「知道了、知道了(わかってるよ)」
 と横をすり抜けていった。十月だから日陰では冷たいのに半ズボンだ。
でも同い年くらいのころのおれたちだって、まだこの季節はてかてかになった
紺色の半ズボン姿で新橋や銀座の裏道を走りまわっていたようなあ、と思い出す。
寒くて脚の皮膚がまだらになって、ちょいと爪でひっかいただけで白い線が何本もついたっけ。
 それにしても北京というところは、懐かしさを感じさせる街である。ご町内の雰囲気に子供の頃の
東京を深く感じるのだ。横丁(胡同)の多い町の構造だけでなく、北京の人の心の機微が、
かつての新橋や銀座に似ているように思えてならない。個人主義のくせにナミダもろくておせっかい。
 いつも北京にやってくると、胡同の角の酒屋で赤ワインを買って、この小さな回教料理店にやってくる。
ワインの持ち込み料などとらないのが潔い。子羊の前脚を一本焼いてもらって両手で齧っていると、
なんだかパリにいるような気分になるから不思議と言うか、いい気なものなんだか。
 ともかく若いときから北京に行きパリにも住んだ私にとっては、日本とフランスを比較するだけでなく、
精神的にはその中間地点に中国があったわけで、パリ⇔北京、北京⇔東京の小比較の上に
パリ⇔東京の文化大比較があったのだから、味覚も相当に独特なものができてしまった。
 で、ともかく昔も今もパリの子羊は高級な料理で、若くて金がなければ高嶺の花。
それがこの胡同の安普請の汚い店にやってくれば、香草をふって焼いた前脚一本が今でも
たった四元(五十円)!羊三昧の鯨飲馬食をやっても五百円以上つかったことがない。
しかしA級よりもB級のほうが、旨さの核心を突くのは世界共通だ。
 赤ワインをごくりと飲む。すると、ついさっきまで東京の横丁を感じていた胡同の静けさに、
これまた情の細やかなパリの因子も流れているのに気づく?いつのまにか、視界は北京なのに、
心の中は前後左右にパリの街が広がっているのに気づく。
 パリと北京は、高い城壁で囲まれた都市だった。この城壁という感覚が日本にはない。
ヨーロッパや中国の城は、広大な城壁を作ってその中に町ができた。城=都市なのだ。
城壁の外は荒野か農地で、文化はない。北京も城壁の外は駱駝が行きかう砂漠で、
そんな写真が沢山残っている。だから北京料理やパリ料理は、正しくは北京城料理、
パリ城料理というべきだと思うのだ。
 さて、北京城はもともと異民族モンゴルが元王朝の首都として築き、次に漢民族の「明」が
治めたものの、女真族(満族)の「清」に乗っ取られた。その後、民国の時代から社会主義国家の
成立は、ある面で漢民族の完全復興でもあった。しかし今も北京には歴史の記憶としてモンゴル
の味が強く残る。
 前門街の賑わいから一本はいったこの「五福楼」の開店は1985年の8月だった。
文革の暗さを引きずったままの北京の町に、小平の「誰からでもいいからさっさと豊かになれ!」
という「先富起来」の大号令が降ってきた。国営の店しかなかった全中国に、
民間の「個人経営」が認められた。北京の下町、前門街でも、嬉々として個人経営飲食店の
開店ラッシュが始まった。ちょうどそのとき看板を打ち付けペンキを塗ったばかりの
五福楼に行き当たり、開店何人目かの客になった。
 さあ、そろそろ今回の旅のお客、赤坂離宮の譚彦彬氏と佐野由美子さん、
マルディグラの和知徹夫妻が買い物を終えてこの胡同に入ってくる時間。みんな銀座に店を持つ。
東京とパリと北京という三つの都市の時間と思い出が、この狭い胡同に繰り広げられるのか。
 胡同の空を、鳩の群れがざあっと横切り、さっきの少年二人がまた走って戻ってきた。
その脚の筋肉の若さがこちらにも乗り移る。デジャブはセンチメンタルなのだ。

五福楼・老馬拉面    崇文区鮮魚口新潮胡同3号

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